先日、文部科学省から4~9月の半年間で14万件を超えるいじめがあり、それは昨年1年間の2倍を超えたという報告がされました。いじめに対する学校側の意識が高まったこともあるでしょうが、それにしてもかなりの数になります。
そんな時に、図書館で「いじめでだれか死ぬ前に」という本を見つけたので、早速借りて読んでみました。
著者の平尾潔さんは、いじめを終わらせるのは簡単ではないので、少しでもそれが起こらないように、自分から学校に出かけて、「いじめの予防接種」として出前授業をしています。ご自身も三児の父親であり、いじめは他人事ではなく、また、弁護士の仕事を通して、多くのいじめに関する相談を受けたことが、その授業の原動力となっているそうです。
本の中で、一番印象的だったのは、いじめの構造を人気アニメ「ドラえもん」の登場人物にあてはめて、伝えていることでした。いじめは、加害者(いじめっ子)、被害者(いじめられっこ)、観衆(いじめをおもしろがって見ている子)、傍観者(いじめを見て見ぬふりをしている子)の四層構造になっていると言われています。
平尾さんは、ドラえもんがいない仮定で、加害者=ジャイアン、被害者=のび太、観衆=スネ夫、傍観者=しずかちゃんとして、「誰が頑張ったら、のび太へのいじめがなくなりそうですか」と、子どもたちに問いかけています。
子どもたちからは、のび太は頑張ってもジャイアンにかなわないから無理だし、いじめをしているジャイアンやおもしろがっているスネ夫は、自分からいじめをやめようとしないと思ういう意見が出てくるそうです。そこで、傍観者であるしずかちゃんこそが、いじめを止める力があるのではないかと、子どもたちに提案していきます。
しずかちゃんのできることは、まずはのび太の話を受けとめること、そして、ジャイアンやスネ夫に「いじめちゃダメ」と強く言ってあげることだと書いています。
現実の世界でもいじめを止められるかどうかは「傍観者」にかかっていると言われています。
これは、あくまで説明のための例え話ですが、いじめの構造を、このように分かりやすく教えてもらえれば、子どもたちも自分たちの問題として考えたり、無関心でいてはいけないと、思うのではないでしょうか。
そして、もう一つ印象に残ったのは、いじめる側の心の傷についての記述です。「小学生の時に同級生の子をいじめていた子が、大人になり、子どもを授かり、授乳するという毎日にとても幸せを感じていた。その時に、昔いじめていた子の泣き顔が急に思い出されて、もし自分の子がいじめられたらと、いじめたことを後悔して、その子に会って謝罪したいと、伝えた。その返答は、辛い記憶しかないし、会いたくないと拒否された」という内容でした。
平尾さんはこの事例から、いじめは、いじめられる側に深い心の傷を残すと同様、いじめる側の心も傷つけることになると書いています。そして、その時に気がつかなくても、大人になり、人の心の痛みが分かるようになると、いじめをしたことの痛みが、心の表に出てきて、その痛みは生涯消えることがないかもしれない。だから、いじめはやめようと子どもたちに伝えているそうです。
いじめることが、自分自身をも傷つけることになると知っていることは、いじめをなくす一助となるかもしれません。
先日食べた、野菜天そば。どんぶりからはみ出す程の大きなかき揚げにびっくりしました。