今年の冬は雪が多いですね。雪は天からの手紙だと聞いたことがありますが、何かのメッセージなのでしょうか?
ところで、最近、新型出生前診断の導入に向けて初の指針案が出されたのをご存知ですか。新型出生前診断は、妊婦の血液を採取して、胎児のDNAからダウン症など3種類の染色体異常の有無を調べる検査です。これは2011年に米国で開発され実用化が始まり、採血だけで流産のリスクがなく、妊娠初期10週から実施できるメリットがあるので、日本でも臨床研究導入に向けて議論がされています。
私は、新型出生前診断のニュースを聞いたとき、何だか命の選別につながるようで嫌だなあと感じていました。そんな時に、ブログ「思い出して あなたの宝物」に、障がいを持つお子さんを育てている方からコメントをいただき、その方の考えを知ることで、ますますその思いを強くしています。
コメントは小6のダウン症であるお子さんを持つお母さんからのものでした。
普通学級に通っているお子さんの仲良しのお友達が、新型出生前診断のニュースを見て、怒って泣いていたと、その子のお母さんから聞いて、
『産まれる前にダウン症かどうかを調べ、そうであれば産まない選択もできることを子どもたち はどう思うでしょうか?ダウン症はいけないこと?命ってそんなことで無くしてしまっていいの?と子どもに聞かれたらなんて答えればいいのでしょうか?』
と新型出生前診断について、疑問を感じているという内容でした。
また、12月24日の道新朝刊、読者からのコラム欄「いずみ」に、小5の息子さんを育てている方の
『まわりの子どもたちとは少し違うけれど、息子には息子にしかないすてきなものを心に持っていると感じている。日々の生活の中で、ついつい人と比べてしまいがちであるが、ダウン症の息子に教わることが多い。』
とダウン症の息子さんへの思いを綴った投書が掲載されていました。
私は保健師として、ダウン症のお子さんと関わった経験が少しだけありますが、そのお子さんたちの無垢な心に、感動したのを覚えています。
産れてきてよい命とそうでない命を、誰がどのようにラインをひくのか?と日本産婦人科学会でも議論されているようですが、その一方で来年にも臨床研究の導入が計画されているそうです。
こういった命に関わる問題は、慎重に、そして十分な議論を重ねて欲しいですし、早期にそして安易に導入することだけは、絶対に避けてほしいと願っています。
大雪が降った翌朝、空を見たらこんな雲が浮かんでいました。冬の青空も素敵でしたよ。
今日12月27日は息子の誕生日です。12歳になりました。
12年前の今日、父の車で病院に向かうとき外は雪でした。そして息子が産まれて5日目にお医者さんから息子はおそらくダウン症でしょうと告げられ、病院で落ち込んでいたときも外は雪でした。私は眠れない日が続き、夜中に病室を出て病院のロビーでひとり外を眺めていたとき、病院の中は温かいのに外は吹雪で、私も退院したらこの子を抱えてこういう社会が待っているのかな・・とずっと泣いていたのを憶えています。それから雪の降る日はよくこの時のことを思い出して鼻の先がツンとくるのです。
でも先日の夜こんな出来事がありました。
めずらしく遅い時間に息子と地下鉄で帰宅することがあり、地下鉄駅から二人で手をつないで雪道を歩きました。そのときも雪が降っていて私は12年前のことを思い出しました。でも鼻の先はツンとこなかったのです。あのとき産まれた息子がこんなに大きくなって今一緒に手をつないで笑いながら歩いていることにとっても心が温かくなったのです。12年前はこんな日が来ることなんて決して想像もつきませんでした。
障がいのない上の子たちの子育てに比べて、障がいのあるこの子の子育ては確かにタイヘンなことも少しは多いかもしれません。でもその分普段見過ごしてしまうようなことに気づかされたり嬉しいことや感動することもたくさんあるのです。それらはすべて「体験」するからこそ分かることで、私も息子が産まれたときには思いもしなかったことです。だからこそこの新型出生前診断にはどうしても賛成できないのです。
これから雪の降る日は息子が産まれたときのことを思い出すのと同時に、この前の二人で歩いた楽しい夜のことを思いだすんだろうな・・・
ちょっと嬉しい気分です。